ヴェニアミン・カヴェーリン - 師匠たちと弟子たち(月刊ペン社)

linedrawing2013-04-30

芝居上演する人形遣いの顛末を語る作家の所作を綴る…ロシアの作家だからという訳じゃないが、マトリョーシカめいて入れ子状に世界開いていく幻想短編集。
ややこしさ増すことに、人形と登場人物が擦り返られたり、あろうことか作中に乗り込んだ作家の行動が登場人物に阻まれたりと、どの層から開かれるか分からない閉じ箱。
酔狂が過ぎるからか、いずれもの物語が結末に至る前に「つくりもの」であることが露呈して糸の切れた世界が転がる。
その盤上に転がるオブジェクトのイメージ、構造ばかりでなくブラザーズ・クエイ人形アニメまで想起させて凄まじい。
人から事物からラインが延び幾何学図に展開されるなんて、まるでそのまま。
いや現在に向って比較求めなくとも、最小のミニチュアでの操作が最大の現実にまで響くと信じる実験が20年代同時代的にあるような気がして、鳴るものがある。