サーデク・ヘダーヤト – 盲目の梟(白水社)

linedrawing2016-01-13

Alain Virmaux、Odette Virmauxによって著された『シュルレアリスム人名辞典』にその名が挙がっていることを知って興味持ったイランの作家、サーデク・ヘダーヤト。
短編集『盲目の梟』読了。
いずれの作品もが不幸の顛末…とびっきりの奇想がある訳でも劇的な展開がある訳でもないのに、取り込まれるかに惹かれる。
淡々とした語りのどこに仕掛けがあるのか。
この前に読んでいたマルセル・エーメの本が奇想横溢していながらピンと来なかったこともあってか、その魅力が不思議に思えてならない。
怪訝に加担しているのが、どの話にも象徴的に表れる予兆めいたもの。
主人公は結果を知っていながら、どうしてか末路へ至る歩みを逸らそうとも弛めようともしない。
最後に収められた中編「盲目の梟」に倣うなら、それはレコードの針飛びのようなものなのかも。
ダブ処理の如く、景色の一部を抜いたり歪めたりしながら、何度も何度も同じ人物、件が繰り返される「盲目の梟」。
レコード盤上に於いて針の到るところは変えられなくとも、遅延したりリズム刻んだりすることは出来る。
人の主観に於いても倣うところはあるだろう。
どんな人生であっても、編集に依って今際の走馬燈に明かりを灯すことが出来るのかもしれない。