H・ミショー - 魔法の国にて(青土社)

linedrawing2013-04-27

季節区切るように風邪っ引き。
出掛ける予定潰れるに比例して進む読書…それだからか手にした架空旅行記。
魔法の国といっても、起こる不思議の殆どが目には映らない。
景色に描けるのは、獣が放たれ、侵入し難い荒涼とした街址…まるで内紛下にある国家の寓意とも思いかねない。
そこで起こる事象は、ありきたりのことであっても、当事者のみが承知している特別な経緯の下にある。
一方併録作が向うは、人工授精による畸形と人体改造の異形の国。
それでもやっぱり奇異は、面と向かうには脆く地下や壺の中に隠されている。
しかもこの世界、折々に刷新されるとまで宣言されるのだから、なんとも不可触な感じ。
著者がメスカリンの服用体験を記録した画家/詩人であるからには、自己内面の探索の末辿り着いた国々だから…と言えなくもないだろうが、幻覚剤体験以前の作だ。
もっと緻密なからくりが仕掛けられているような気がする。
そこに近付くのを阻むのが朦朧としているのは訳文(笑)であることの歯痒さ。
からくり解く興味は、メスカリンの援用に至る経緯併せ、それを勧めた自身作家でもある編集者ジャン・ポーランの著作にまで向いかねないな。