C・I・ドフォントネー - カシオペアのΨ(国書刊行会)

linedrawing2013-04-06

C・I・ドフォントネー『カシオペアのΨ』読了。
19世紀半ばに綴られた、異星の年代記
プリズムの分光作用を見るように煌く風土を舞台にしながら、語られるのは理想郷ではない。
どこか寓意とも覚える要素を与えて、顕微鏡で覗き込むように辿る、物語の成長過程。
ばかりか跋文で読者にまでこの星の上で想像を育むよう奨めるのだから、この世界の倫理は個々の創造の自由だろう。
それを要衝に面白いように物語世界は枝葉を伸ばす。
ただ、ちらちら覗くシニカルさや語りに語りを重ねていく意匠などから、
この長く忘れられた作を20世紀に再発見したというレイモン・クノーの詐術に嵌められているのではとの疑いがどうにも晴れない。