触れる端から消えて行くもの 2

linedrawing2008-09-23

20日
中古レコード屋があったはずと聞いて、足を伸ばすナヴィリオ運河沿い。
催して仕方なく入る駅の有料便所…愛想の良いおばさんが、それこそ我が部屋のごとくきれいに飾っていて、それはそれで利用の甲斐はあったかも。
チョコかキャンディも貰えるんだよ。


辿り着いたレコード屋は、アメリカかぶれかロックンロール尽くし。
フランスものでもNEW ROSEばかり、ガレージなんかは、こんなものまでとすら思えるものまで見つかるのに。
イタリアのレコードはどこに売っているんだ。


仕方なく、目につく美味しそうなものを食べ歩く…ピザやらパンやら。
エビにタコ、イカなんかのフリッターのミックスが、絶品でした。


もしや直売もやっているかもと、地下鉄乗り換えて向かう、レーベルDie Schachtel所在地。
着いてみたら、これが倉庫。
そばのA+M Bookstoreなるところでやっている、スイスの美術書出版社JRP|Ringlerの展示即売を覘いても、気になるDIETER ROTHの作品集は見当たらない。


夕刻から展示会場に入ると、懸案だったプロジェクターから制作風景の映像が投射されており、一安心。
が、VJとでも勘違いしているのか、美容院スペースから喧しく音楽が鳴っている。
さすがに堪え切れず、改めてもらう。
一瞬でも馬鹿共の顔を立てなければと考えた自分が、甚だみすぼらしい。
守るべきは作品の在り様…いかようにもの視線に曝すためにも。


週末とあって賑わう通りにチラシ手に立ってみると、入り口からの眺めもあってか、容易に興味引き当てることが出来る。
年配の女性からの、図像が即興から編まれていることが大事…との言葉に救われる。
日本からフィールドワークに来ているという学生二人の持つ、真摯でいて柔らかい空気にも。
久々に、マーク・リボーやラウンジ・リザースの話が出来たのも嬉しかった。
これら幾重もの視線に感謝。


とはいえ、頭来たことでどこかとち狂ったか、寝るまでのとんちんかん。
部屋で転けるは、アイス溶けるまで放っておいた上に服に零すは、間違って炭酸水を買うは。
COOPで買って来たお惣菜は、この旅初めての頂けない味でした。


21日。
カメラマンである、コーディネイターさんの旦那さんに案内してもらって、まずはサンドナートの蚤の市へ。
インドだか、トルコだかの音楽が流れる中、なぜだか電動工具が多く並ぶ。
ここはもう乗りで面白半分に、案内人の薦めるがままのレコードを購入。
内容はさておき、針が無事乗ることから祈らないと。


さて次はどこにと思えば、スフォルツァ城博物館に忍び込む。
城というだけあって見所はどこまでもなのだけれど、このためにと連れてこられた、ミケランジェロの遺作“ロンダニーニのピエタ”の前で打たれる。
不思議な姿はもちろん、ある種の幅を以て迫る、佇まい、印象。
そうやって確保された空気の中に、なにかが封じられている。


以前に開催されたLUIGI SERAFINI展のカタログが欲しくて、連れて行ってもらうPadiglione d'Arte Contemporanea。
運悪く展示替えの設営中で、ミュージアムショップ自体が閉じている。
仕方なく…という展開が多いのだけれど…隣接する19世紀美術館へ。
その名前に反して、近代作家の作品までそろえているけれど、ここは筆致に迫る世界だな。


ドゥオーモ博物館脇のスペースで、音楽家のビデオ・ポートレイトとでも言えば良い企画展がやっていて、今日の楽しい観光も一先ずここまで。
しかし、場所はどこであれ、フレッド・フリスを目に出来るのは嬉しいもの。


夜は、コーディネイターさん宅の夕飯にお呼ばれ。
土産の方策なく、日本から持ち込んだマシュマロを携え行くが、夫婦揃っての好物と聞いて助かる。
それにしても、旦那さんも奥さんも双子の息子さんも、揃って可愛らしい一家なんだ。
僕の僅かな家族願望に、憧れが一項多く加えられている。
食事は、イタリア家庭の伝統的…との説明聞かずとも抜群に美味しいパスタ。
白飯が欲しくなる…とは、僕のバロメーターなので、ご容赦を。
こればかりか、あとにハンバーグとポテトサラダが続くのだから、満足しないわけがない。


ごはんの後に、先の中華料理店での3人が揃い、深夜まで話し込む。