軋轢を踏んで登る

linedrawing2007-09-28

11日。
小出由紀子事務所、オズヴァルド・チルトナー追悼展。
広い空間ではないけれども、対面にぽつりぽつりと2点のみ。
どれだけ描くことに執着があったか判断付かないドローイングが、描き続けられてきた中で定点観測とも映る。
作品集の繰る頁が、天候の変化を追うようで。
連なっていく前後があるから、今日ここに置かれているのは充分な点数。
断ち切れることなく続く先まで想える。


朝から底が抜けそうだった天蓋も、耐え得るはここまで。
バラバラと降り出してくる。
豪雨に押さえつけられるようにして、打ち合わせ場所に向かう。


表の天候も然ることながら、疾駆の展開。
挨拶から、気が付けば自分で目論む以上のところに着いている。
唖然として、後から期待が追い着く始末。
う………うあああ!面白い!!!


退いた雨足に出た路で、若い女性から、新宿御苑の入口を尋ねられる。


GALLERY it's、“数字”展。
テーマといい、活動を耳にすることの多い作家が揃っていることもあって、期待を持って訪ねたのだけれど、どうしてか腑に落ちていかない。
表面に浮くのは、惹かれる風合なのに。
数字、文字、紙への執着が、どこにも引っ掛からずに滑り落ちていくからだろうか。
ここに来るといつもと言っていい程、展示の効用について…再びの雨もあって、長話。


13日。
鏡を見積もってもらいに訪ねたガラス屋の帰りに寄る、GALLERY HIRAWATA、瀧本光國 展。
DMの画像に葉のように見えていた木彫が、実際は遙かに大きく、感覚が惑わされる。
全体が背景に退き、彫り目が眼前に広がる。
吹き抜けの2階から見下ろせば、確かに同じものではあるのだけれど。
作家が仏師でもあると聞けば、更に巨大なものの細部のみを眼にしている気がしてきて、眩む。


15日。
前に一度しか足を運んでいないにも拘らず、お気に入りと断言出来るロケーションにある阿佐ヶ谷TOTAN GALLERY
“ダイニングデスク”と称する公開ディスカッション。
この回は‘仕事’をテーマに、異なる分野にある3者が意見を交わす。
トントンと進む話に、それぞれの立場からの共通点ばかりが挙げられ、気が付けば仕舞いまで展開も発展もなかったのでは。
噛み合わない話を結ぶのに次元を移っていくのを期待していては、食い足りない。
質疑応答の時間に問うてみるも、操りきれていない自分の言葉に、却ってもどかしくなってしまう。


急ぎ四谷に移動。
イタリアンBAR TAMAGOで開催中のかやのしほ“180°”展、作家企画のイベント。
ライブの背景となる状況も手伝ってだろうけど、大きく空間を形作る展示も見てみたくなりますよ、かやのさん。
着いたら、すでにオハラマヤさんの演奏が良く響いている。
どこで鳴らしても、深く棚引く音。
空間に遍在する音をピックアップするかの山田民族さんをサポートに、続くフミノスケさんも着流しの所作で複雑に照り返す響きを生むのだから。
両者の唄で沈静する。
終演後の久々に会う面々との話は、駅までの道すがらまで。
当時、こんな気の良い人達に出会っていたことに気付かなかったなんて、何に憑かれていたんだろう。


23日。
おやつ持って伺うアトリエでの、羽田野麻吏さん、トミ象さんとの打ち合わせ。
目的の展示ばかりでなく、周辺のあれこれも起動しながら進んでいるようで、何が連動してくるのか目が離せない。
実際に制作が始まればそうは言えなくなるだろうけど、今は広げられるだけ風呂敷を広げておこう。


閉廊後の到着に慌てるが、折良く関係者パーティー
お知らせくれた安斉将さんを当てに混ざる。
恵比寿Clip Inter Media、“THE INNOCENCE SUMMER 2007”展。
開催に関わるDJの結婚祝いも兼ねてとあって、手作りな良い宴。
ただ、展覧会としてはどうなんだろう。
作品が追い遣られて壁面にあるかの眺め。
酒精に駆られたか、誰かさんとちょっとだけ論争。
1週間前を混ぜっ返すわけじゃないが、どうして、誰もが共通する因子を持っていることが前提となるのか。
手許にある素材を機転で遣り繰りしていかなければ、話どころか何も動かないと思っているのだけれど。
…なんて後になって書くようには、やっぱり応えられず。
敵は我が言葉と崩れ去る。
へぇ、手前の役回りは騒動屋で。