ハードル走

linedrawing2007-06-10

調子の上がらない5月を暗雲と決め付け、抜き去る駆け足。


5月27日。
久々出会うN.Y.在住のsawakoさん目当てに、宮城から出てきていた友人と向かうは、川縁に間口を開いたカフェ。
combine、“カフェイン・チルアウト Vol.13”。
入場早々に見付けてもらい、交わす言葉は嬉しく。
喫茶時間進行とあってか、長丁場の催しらしく、間が長い。
一番手に演奏のcokiyuは、電子音に浮くトイピアノシロフォン、そして喋りに表れるキャラクターまでがコロコロと。
続くmesomesoの、時折大きく揺らぐギター、トイピアノでの弾き語り。
いずれも訥々と跡を残すも、予想の範疇にきれいに収まることに違和を覚える。
それよりも、機材トラブルで中座したodagiri miki、ループを重ねていってどんなモアレを描くはずだったのか、気になって仕方がない。
と、ここで声掛けられるも、気付くまで間があり申し訳ない…広報に訪れていたmapの小田さん。
暮らしの音楽推進、ご苦労さまです。
トリにsawakoさんの圧巻。
音像の対比もあるのだろうか…以前にも耳にしているはずが、ここまでだっただろうか。
空間に景色を上描きし、攪拌しながら、短い時間にきれいな着地点を見付ける。
見事に編集された一幅の音。


残響にほくほくと友人と別れ、納品もあり立ち寄るGALLERY it's、柏木江里子 展。
反復への偏向は、版や型のいびつな増殖が基にあるのかもと、自らを顧みさせる和を想う意匠。
殊更、折り紙などの紙の仕事に惹かれる。
そそくさと用事済まし去るつもりが、話始めると止まらず、この日はここまで。
後に用意していた予定の代わりに、本を…手に取ったら戻せなくなってしまった、キャロル・エムシュウィラー“すべての終わりの始まり”を買って帰る。


31日。
ふらり寄ったgift_labで大ポカ。
日頃からお世話になっている顔を見間違える。
脳のどこが、活動を休止しているのだか。


NADiff クロージング・パーティ。
一掃セールも最終日とあっての賑わい。
もはや残滓と思いつつ、催し始まるまでの間CD棚を物色してみれば、買いそびれていたものがゴロゴロと。
フルクサス作家HENRY FLYNTの循環カントリーと、元CATALOGUEのギターリストJEAN-FRACOIS PAUVROSの唄もの、LAFMSのFREDERIK NILSEN参加のPYROLATOR 2nd…の3枚になんとか絞って。
愛聴しているALBERT MARCOEURの1st、JASON KAHN“Songs For Nicolas Ross”が複数枚で残っているのが、なんだか口惜しい。
そうこうする内、NADiffスタッフ・オールスターズが居並び、来場に久々に見る顔も見付ける。
閉店とはいっても、すでに恵比寿での新店舗の建設が決まっているとの発表があれば、社長の挨拶に続くベリーダンス・ショーの狂騒が厄落としにも見えてくる。
ともあれ、お世話になったスタッフにお疲れさま。


6月1日。
茅ヶ崎で両親と焼肉。
腹ごなしにと散策する商店街に、以前から気になっていた酒屋の佇まい。
初めて足を踏み入れれば、なんと量り売りの店。
十一屋 水澤酒店。
壜を選び、タンクから日本酒を詰め、手描きのラベルを貼ってもらう…その手順のどれもが嬉しい。
早速に口にした味が、いずれにも勝る喜びなのだけれど。


3日、新宿。
共作品の思案あぐねた仕様に、羽田野さんが助っ人でTOMIZOさんを連れて来てくれる。
次々と取り出される細工の見事さ…精緻、機転、正直に舌を巻く。
軸足ぶれないもの作りとは、かくも痺れるもの。
感謝と共にTOMIZOさんを見送り、触発されて膨らんだ構想に熱冷めやらぬままケーキ頬張り2人打ち合わせれば、はたとハードルを一層上げたことに気付く。


夜から始まった痛みに眠れず、病院を経由しての翌日、gift_lab。
紹介してもらった山田さんの目論むところのもの作りが、またぶれがなく、やはり痺れる。
痛み忘れて、夢中で言葉を交わす。
ここから、なにかが始まれと。
後に控えたLinus'〜の打ち合わせでは、心持って行かれたたままで、ぼんやりしていたかもしれない。


6日。
僕のmix CD“rotae”の発売を記念しての“Touch!!!!!!!!”。
見知った顔の多い客席に助けられてか、力抜いて喋り、曲を掛けることが出来たように憶えている。
ただ、同時に発生したユルい空気のフィードバックを、どう受け取ってもらえたか。
溝を切ったCDによる鈴木さんターンテーブル奏は、その絵面こそ唖然とするが、音は意外や繊細。
僅かにピアニカと声を加えただけの平野さんのピアノは、記憶のどこかを共鳴させる。
レクチャー/世間話と化した、DJ Peakyさんの音標本は爆笑。
充実の出演者にも救われ、感謝しきり。
終演後、円盤店長セレクトの脱臼音楽に耳を傾ける。
無意識、未熟ばかりに惹かれるとは、厄介な耳を持ったものだ。
帰宅電車に揺られながら、平野さんと尽きぬ音楽談議。


暗雲抜けたが、雨雲の季節。