壜の底

linedrawing2007-01-29

白々と空いた間隙は、言葉を放った端から予定で埋まっていく。


26日。
出来上がった原画、音源を、commune discさんに受け渡す下北沢。
世間話から、リリースに纏わるあれこれへと話題は繋がっていく。
自分たちの興味から始まって、イベントの計画まで。
この目線、素材から完成までの近しさは、料理のようだね。
…何についての話か、詳細は追々。


側を通れば、覘かずにはいられない中古盤屋。
行き付けた店に向かうには時間が早く、後の予定もあって、ユニオンばかりで我慢。
100円セールに3枚選ぶ。
当時6歳の、GENESIS P.ORRIDGEの娘がジミヘンの曲を唄う、CARESSE & SICKMOB。
プログレ化したXTCとでもいうような、有り得ないコンビネーションを聴かすCARDIACS。
勘で手に取ったAPPLANCES-SFB(帰って聴いてみたら、野暮ったいNOMEANSNO)。


渋谷に出て、代官山まで歩きで向かう途中に、見付けたgg
ROBA ROBA cafeさんに教わっていた雑貨店。
時間ないのに、吸い込まれるようにして寄ってしまう。
月毎に内容を変えるという店内の、今月のテーマは‘和’。
商品やら作品やらが細々と、区別なく並んでいる。
私設の小さな博物館のよう。
‘喫茶’をテーマとする来月も、また来よう。


以前から気になっていたギャラリー、タケフロ。
DALE BERNING“The Moth Sessions”展。
暗くなってしまったからかもしれない、急いでいたからかもしれない、…‘かもしれない’を重ねたところで、良い言葉は出てきそうにない。
間欠的に鳴る物音、移動と記録を示すかのドローイング、いずれも魅力的ではあるが、展示された場所に結び付いていかない。
所選ばずに、保管されてあるだけのことのよう。
そもそもの興味を持ったのが、アパート一室であること…そのロケーションを封じているのが分からない。
階下で別の展示もあったが、ちらり覗くばかりで立ち去る。


イベント開催を頼みに、久々のgift_lab
変わらずに出迎えてくれ、快諾もらう。
忙殺の最中には考えもしないけれど、終って思い返せば、楽しんでいたことに気付く…制作の話も。


この日の仕舞いは、原美術館
アドリアナ・ヴァレジョン展、オープニング。
空間一面のタイルを歪ませる水面…が描かれた絵画。
迷宮めいて、画面を彷徨わす視線を外せない。
旧作での搾取のタペストリーは露骨に過ぎ、ますますタイルの前へと導かれる。
…視線は凹部に溜められるんだ。
美術館スタッフと言葉交わして表に出れば、昼の天候からでは予想の付かない雨。
水の向かうところに逆らっての帰路からか、行き着けばずぶ濡れ。


27日。
製本家の羽田野麻吏さんのお誘いに、ミーティング兼ねて東京大学総合研究博物館上田義彦“マニエリスム博物誌”展。
印刷によるものか、全く光沢のないプリント。
被写体に微かな発光をもたらす、背景の黒に引き込まれる。
黒板かフェルトとも見える闇は、それらと同様に平面でありながら、見えない奥行きを持っている。
瞬きの中に定着される標本。
ただ、それらの魅了を無視して綴じたかのカタログには、げんなり。
急拵えの継ぎ接ぎで、なにを封じようというのか。
連日のエコー。


受付でもっともな不平を耳にしながら、学内でお茶が出来る場所を尋ねる。
案内に従うも迷う内に時間踏み外したか、ホテル様と聞いた目的地はいつの時代のものか。
絨毯の柄/調度の一部となれるのか居心地良く、長居しての会談。
楽しみなコラボレーションの完成のイメージを前に、立ちはだかる実際の問題についてを。


東大出て、空いた小腹抱えて近江屋洋菓子店
元の時代に戻れていないのか、ここも50年代の夢で編まれている。
景色も味も初めてなのに懐かしい。
この感覚は…確かに甘い。


帰路に寄る新宿。
CD求めて向かうレコード店で、目当て見出したのはバーゲン箱の中というのは、複雑な気持ち。
まだ、新譜で通用すると思うのだが。
時間の辻褄がなかなか合わない。