フレイマー・アンフレイマー

linedrawing2006-10-29

ここのところは、出先で喋るとなると、‘フレーム’について水を向けている。
それが、その都度話しながら考えを進めているものだから、きっと切れぎれに断片をばら撒くばかり。
拾い繕わされる相手には、苦労掛けていることかと。


26日、クマリネさんお薦めの展示。
ならば、会場に辿り着くまで他も一緒に周ろうと、合流する表参道ナディッフ
店内ギャラリー・スペースに眺める大竹伸朗のドローイング。
タイトルに呼応して、屈伸する線が可笑しい。
可笑しいが…どうしたことか、惹かれるところがない。
気になる存在であり続けていたはずなのに。
並んだ出版物の中に、フランス語版の絵本“ジャリおじさん”を見付けて手に取れば、やはり感慨深い。
…のだから、状況にこちらの調子が噛み合わなかっただけのことか。


表参道画廊、安藤孝浩+志水児王 展。
暗室に灯るいくつかの明かり。
配置が描く図像と、音の差異。
雪のような沈殿を持つ水槽。
いずれもが、息を潜めたかの佇まい。
不意に訪れる装置の作動は、だからか、視線を外すかのよう。
穏やかさ…こっちがこの日の気分か。
向かいのスペースMUSEE F、長田堅二郎 展は、対照的に白い空間に根を張る造形。
地下での蝉の暮らしを想ったり。


道筋に立ち寄る古書日月堂
紙モノを多く扱っているからと、作品素材を漁るが、そうそう目論見に副うものは出て来ない。
それどころか、他に欲しい本を見つけてしまって、目的忘れて悩むことしばし。


同じ建物の中の東青山
インスタレーションのごとく、美しく器が並んでいる。
中央に蝟集する薄青は起伏する泉。
店員を交えて、しばし閑談。
どうして、皆ささやかなものへと惹かれて行くんだろうね。


void+、萱原里砂 展。
吹雪の中に、うっすら浮かぶ輪郭。
白く白い空間に、消え入るまでに白い写真。
ほら連なっている…とばかりに、ここでも穏やかな静寂がやって来る。
とても居心地が良い。


さて、当初からの目的は、cafe ユイットでの中島博美“雪を待つ。”展。
北欧の景色の中、写真に切り取られた所作。
スリフト・ショップで見付けた家族写真のように、遠く近いぬくもり。
写真に写った写真とでも言える距離感のノスタルジー
そもそもタイトルが、すでにしてこの日のラインに乗っているじゃないか。
実のところラインは、誘ってくれたクマリネさんの作品の印象から始まっている。


28日。
一昨日から本格化した風邪に、朦朧としているのは歩みか/記述か判断つかねど、昨日を辿れるかどうか。


来年の帯留展サンプルを青山スパイラルまで届け、そのまま渋谷まで歩く。
タワーレコードに覘く¥500棚。
ALEJANDRA AND AERON“Folklore Fragments Volume 2”。
NORFOLK & WESTERN“Winter Farewell”。
JONATHAN SEGEL“Non-linear Accelerator”。
元CAMPER VAN BEETHOVENのバイオリン奏者JONATHANは、実は来日したことがあって、今は無きオフサイトで会っている…と言ったら、驚く人もあるかな。
その折貰ったデモCDRの曲所収のアルバムなのだから、嬉しかったり、哀しかったり。


代官山まで足を延ばし、そこから電車で向かうは武蔵小杉、川崎市市民ミュージアム
試合終了に混雑する近くのサッカー・グラウンドを横目に、閑散とした会場の“眩暈の装置〜松本俊夫をめぐるインターメディアの鉱脈”展。
展示ばかりでは当の松本俊夫への距離が測れないのは、映像作品を見ずに済ませたからか。
それよりも、この機会に応えた他作家。
予想外に、静かに佇む伊東篤宏の作品。
四方を躊躇いつつ廻る蛍光灯の発光が象徴しているのか、作品に表れる光の三原色は、分解された要素としてではなくて、視線を受け継いでいく過程のそれぞれ一項であるかのよう。
池田朗子は、ちょっとしたイタズラで、‘メディア’の意味するところが‘媒体’であることを際立たせている。
…なんて物言いもどうでも良いほどに、おかしな景色が広がっている。
カイロの紫のバラ”を連想したり。
映像を交えた作品であることに意外を感じるも、元から係わりが深かったことをすぐに思い出した、中原昌也
僕には、最も松本俊夫へのオマージュに適っているように見えた。
ここでの安藤孝浩作品は…申し訳ない、ぼんやりした頭では印象を掴み損ねた。


“筆跡と光跡”展でお世話になった学芸員・スタッフとの話が過ぎて、慌てて向かう多摩川
art & river bank泉沢儒花“沈黙の花”展。
慎ましく小さなものに描かれた風景に、隠された道を想い。
視線を外して会場を眺めれば、冬の物語を感じる。
会場で、commune-discのaenさんと出会い、いかにフレームを脱臼させるかの目論見算段。
待ち合わせた安斉さんと、駅前の焼き鳥屋で一杯がこの日の〆。
僕らにフレームは見えないのだから、勝手企てたろ…が結論。