プレヴェール - のんぶらり島(牧神社)

linedrawing2017-09-27

天井桟敷の人々』の脚本で知られるジャック・プレヴェールの仕事にシュルレアリスムの血統求めたら、辿り着いたのは童話。
2冊の絵本を合冊にしたもので、後半の『おとなしくない子のための童話』は別訳も存在するのだけれど…この封筒模した装丁が欲しかったのが、いや本当ところかも。
凝った意匠の表紙をさてと開けば、動物が人と言葉交わすメルヘンにも拘わらず、鋭い刃を突き付けてくる。
前半の『のんぶらり島』でいえば、発展途上の地と領土拡大図る都市との対立が一見それと映るが、そうではない。
それでは寓話のなまくらで済むだろう。
のんぶらり島の住民は「発展」と距離を置くことを自ら選んでいるのだから。
同じ者などいない個々の違いを認められる世界と、同じ価値観の傘の下に全て置かないことには収まらない世界とが対峙する、このリアリティ。
八つのお話から成る『おとなしくない子のための童話』の冒頭に置かれた「駝鳥」。
いらない子供の烙印押す世界などこちらから捨ててしまえと旅に誘う駝鳥の優しさには、血すら出かねない。
その言葉が稀有さに瞬いて零れる。
それで生き死にが変わるわけでも、現実の酷薄さが軽減するわけでもないけれど、世界は他者から成るという前提に了解を得られないのはやっぱり理不尽だ。
理解の向こうの「あなた」と常に対峙していることが証となるだろうに。
それぞれに添えられたアンドレ・フランソワ、エルサ・アンリケのいびつで滅法愛らしい絵にも心解れるが、こんなフィルターを通して世界を眺めることが出来れば、人の中にあって息吐くことも楽になるだろうにね。