TOM SCHMIDT – Deer Park (LP Muse/Art '83)米

ここのところの愛聴盤、というか発見。
ジャケットのだぁれもいない景色に惹かれて手にしたら、これが大当たり。
どこの国の民族音楽が由来か…オリエンタルな旋律の輪郭をなぞって転がる音粒が、反復しながら気付くとラグタイムになっていたり再びに異邦人のふりしていたりする。
ピアノ独奏なのに、鐘のように鳴る低音やハーモニウムと聴き紛う残響拾っている録音の素晴らしいこと。
凛とした空気の向こうで微笑む温度を確かに伝えてくれる。
録音当時に照応するものか分からないけれど、調べてみたら、チベット音楽の研究とJack DeJohnette等をサポートするジャズベーシストとしての並行するキャリア持つTom Schmidt。
なるほどと旋律の由来を前者からは測れるけれど、完全にコンポーズされている上にピアノ曲である今作から後者の気配は見付け難い。
架空の土地に漂う音楽が侵犯するのは、現実の国境ではなく演奏家の…ひいては耳にする個々の内なる境界なのかも。