DON VOEGELI – Oscillations 1, 2, 3 & Vol.5(lp University of Wisconsin-Extension '72-'77)米

linedrawing2012-06-18

ウィスコンシン大学電子音楽スタジオから放送用音源をしこたま送り出したDON VOEGELI。
昨年、思い掛けない値段でまとめて手に入ったOscillationsシリーズ。
77年の5枚目で打ち止めだとしたら、あとvol.4が揃えばコンプリートか。
vol.1からvol.4までをまとめたボックスもあるのだけれど、これも出合いだから。
シリーズタイトルからは効果音やBGMとしての万が一の必要に託ける電子実験とも思いかねないが、
ここには夢見るようなメロディが満ちている。
それも、オールインワンなどという技術面の理想からではなく、アンサンブル志向する機械が見る夢。
シリーズ追って耳澄ませば、アイスクリームの移動販売の伴奏から始めたとぼけたロボット楽団が、
仕舞いには人間のソリストとの共演果たすまでの物語が展開するだろうか。
能天気な夢が瓦解する70年代の轟々たる響きの中にあっては、砂糖菓子めく電子音楽は既にして一種のガーンズバック連続体だったんだろうな。
かつて思い描かれた/訪れなかった未来。


ガーンズバック連続体」は、ウィリアム・ギブスンの81年発表の短編小説のタイトル。
サイバーパンクの到来祝う短編集『クローム襲撃』で初めて読んだ時は、
この30年代に夢見られた未来像を幻視する男の話は些か野暮ったくも感じたけれど、
読み返すこともなく今では印象が深くなっている。
物語の中で、かつて夢見られた「未来」の残像は醜悪な現象たる「現在」で中和してしまうが、
良いじゃないか、
辿ることのなかった時間軸に予期される「現在」を今ここで作って見せることにも意味があるに違いない。