そこからでは見えないもの、そこからでしか見えないもの

linedrawing2010-09-04

8月29日。
朝起きると足先が痺れていて、背中の痛みは尚更。
洗面台に見る顔、首には、発疹が酷い。
せめて前日はと、ゆっくり過ごしたのが仇になったか。
堰き止めていた疲れが、どっと噴き出した形。
暑さにも追い立てられて家を出る。
乗り換えの大船駅のホームで佐藤さん、内山さんと出会い、
思ったよりも手前に催しの入口はあった。
“one day exhibition & live performance CAWC, Kanagawa”。


ダイヤの乱れからぬかったと思いきや、会場の喫茶ミンカへは僕らが一番乗り。
追って三々五々参加作家集う呑気な空気は、搬入/設営作業まで。
開店と共に客足は連なる。
飲食から作品への動線視線の邪魔にならぬよう揃って表に出るも、
11人で入口塞いでは元も子もない。
展示番に2人残して、作り手は早々に退散退散。
退避場所は、線路挟んで反対方向にある石かわ珈琲。
明月院脇を抜けて行くと明らかに温度が変わり、一息吐く。
ひんやりと落ち着いた店内ともなれば尚更。
皆、その場に根を張りかねない。
が、意識を駅前まで引き戻すかに、度々に会場から悲鳴のような現状知らせる電話。
会場案内する隙間ないほどの混みに、居場所求めて、席が空くのを待つ客と共に表に並んでいると。
昼食はミンカでとの期待は泡と消える。
2人ずつ交代要員に戻りつつ、話題はある種の疑惑(笑)。
いや、それは根も葉もないことです。


順番回り展示番に会場戻れば、山場過ぎてがこれほどかと思うほどの人入り。
ちょうど知人2人が続いて顔を出してくれるが、作品案内する他の中において話さざるを得ない。
それにしても、10人も参加作家がいるのだから誰彼かの知り合いなのか、
誰もが熱心に作品を観てくれている。


直ぐ戻るつもりでの昼食に、駅前の鄙びた中華料理屋。
焼きそばを頼むと、‘かた焼きそばだけれど良い?’と確認されるのが、
どうしてか懐かしい気がする。
一緒に出た内山さんがビール頼んでくれ、
一足先に乾杯。
村の中にではなく、村を作るのでもなく、新たなシステムを組み立ててみせること。
点を結んでシステムと為すのではなく、その都度点を結ぶシステムを成すこと。
…要約したらそんなような、僕が勝手抱えていた今回構想していたところを話す。


どうも気が緩むと調子悪いのを思い出す。
パフォーマンスに備え、トイレに走りつつ、気持ちをキリキリと張っていく。
人群れの中に空間確保し、揃ってペコリ一礼して始めるqumonoss。
緊張しいもあって、視線伏せてバンジョー弾くのが常なのだけれど、
井村さんがセルフポートレイティングするカメラの音で動線は読めると思っていた。
呼応に集中し、タイム感のみで応えるべく、リハでの即興を元に削いでいった旋律を用意していた。
それが、僅かに頭上げた時に動きが目に入る。
呼吸がある。
気が綻び、このセッションがとても楽しいことに気が付いた。
終わると増えている見知った顔にも、同じ解があった。


作家の自己紹介挟み、カナダから来ているジェフ・ラポートのライブ・インスタレーション
庭に明かり灯り表情変える夜の景色に、遠い国から伝えられているかの音が響く。
片側に被膜張られた筒内にエアコンプレッサーで玉を跳ねさせる装置が、こんな民族音楽めいた響きを奏でるなんて。
関係者、来場者の区別なく、皆興味津々に仕組みを順繰りに覗き込む。
作品が素晴らしいことはもちろんだけれど、余所者のない心地好い空気が会場にはある。
それぞれ足を運んだ理由はバラバラだろうに…不思議。
だからだろうか、作家それぞれが緊張しながら自らのことを喋った言葉も、きれいに拾われていた。


最後に控えしがIL GRANDE SILENZIO。
一日の疲労が蓄積されたところに、正直保つかと心配だった。
佐藤さんの装置の発音を聞けば、
あとは自分のテンポの中での反復しかない。
仕舞いの切っ掛けをもらった時には、バンジョー載せた足は痺れ切っていて。
まさか30分しか経っていないとは思わなかった。


客足退く中、そそくさと作品撤去。
けれど、幕引きを延ばすものがあるんだろう、
揃って皆でカレーを注文。
振る舞われたビールと共に話しは長く続く。
終幕はそれぞれに持ち帰っただろう。
各人にとって、特別な一日であれば。
いずれにしても、この場所無くして催しは成り立たなかった喫茶ミンカを始めとして、
関係者来場者への感謝を添えて。


とはいえ、催しはほんの窓口。
まだまだ、こんなものじゃない。
井村一巴、内田紫陽子、内山聡、小川敦生、ossa、甲斐優子、佐藤綾、佐藤実、内藤瑶子、早健、喫茶ミンカ。
それぞれが、あなたの思う以上に面白いことをやっている。
活動追わずは損。
あとはあなたの足次第。