点線

linedrawing2007-09-07

放した犬の帰趨を気にしたところで、仕方がない。


カード形式の図鑑の一葉を引き抜いたかの仕上がりに気圧されて、何につけてもフライヤー撒き。
実際のところの目的は、仕上がった額装の受け取りに出掛ける8月7日。
まずはデザインしてくれたgift_labに感謝と共に届け、周辺回る。
AQUVIIでの‘今日の夜にイベント’との誘いに応えて、戻って来られるだろうか。
おや、店内にぬいぐるみが巣食っているね…yuya inagawa“peep the room”展。
芝居小屋めいて月毎に景色変わる雑貨店ggは、‘奄美大島’をテーマに物産展の様相。
暑気慰めに食べた島バナナのアイスキャンディは、生のバナナよりイメージに叶うバナナらしい味。
企画の中心たる展示で、土地の者とも観光客ともなれずにしまおまほが浮遊している。


六本木に出て、額装施された作品受け取り。
喩えばかりでなく、標本箱と見える仕上がりに嬉しくなる。
ただ、やはりこの荷物では、他は回れそうもない。
せめても、駅までの道すがら。
magical ARTROOM、鶴見幸代“左目のいちじく 右目の太陽”展。
ギャラリーのイメージに持っていた、情報の混淆と色彩の氾濫…と遠目に見間違えるが、眼を凝らせば静まる。
写真の上に積もるドローイングが、ドローイングの後景の写真が互いを諫め、それでも洩れる物音が印象となるよう。
アート・バイ・ゼロックス ギャラリー、浜田涼“忘却録”展。
焦点合わすことを許さない写真が、いつしか画面から‘もの’と化している。
四角く湛えられた水のよう。
あれ、水面ももの映す画面か。
ではあっても、水であるからこそ、この難しい空間に馴染んでいるように思える。
久々に会う作家と、展示歴で重なるスペースについての長話。


10日。
忘れぬ内に世界堂に寄って、そのまま新宿眼科画廊へと足を伸ばす。
UZOなる漫画同人誌で目にした、暮らしある異界に惹かれて、あかばねまき“ちいさいまちのはなし”展。
タイトルにある通り、白く小ぎれいな空間の壁面が小さく開拓されている。
古紙の上に描かれたものもあり、そのまちは頁と頁の間にも存在するのかも。
あかばねさんの自律する線の話に共振。


ディスクユニオンで、ここのところ顔を見なかった知人と遭遇。
話しながらレコード繰れば、後のメンバーの動向は耳で追っていたORTHOTONICS見つけ、すわと購入。
紙好き集う場所への案内兼ねて、話切らずに一緒に千駄ヶ谷方向へ出る。
PAPIER LABO
助かることに、捌けるからと、ごっそりフライヤー預かってくれる。
知人の参加する猟奇句会の話題でひとしきり。
表参道で別れ東青山へ。
予測通りのオナガの雛の顛末を耳にする。


品川で、会場分のフライヤーを啓祐堂に分けてから、原美術館、紺泉“ある庭師−多分のひととき”展。
不思議と、実際に庭に置かれた作品よりも、室内の作品に庭の印象を覚える。
終了間際に駆け込んだのにも拘らず、和む人、言葉、空間に一息。


15日。
実際に刷ってみたら合わぬ紙に、代わるものをと最寄りの世界堂へ。
久々に出た駅周辺をついでとばかりに散策。
大型CD店の閉店セールに出食わし、輸入盤の殆どを¥500均一とした棚から、ウハウハと買いそびれていたものを拾う。
The 49 Americans(シングル集)、Silicon Teens、Die Doraus & Die Marinas(2nd)、The Residents(Duck Stab/Buster & Glen)、Gary Wilson、Shockabilly(3rd & 4th)、They Might Be Giants(1st & 2nd)…と、80年代音源の再発ものが殆ど。
最近のものはLast Foreverばかり…って、なにを収穫挙げ連ねているんだろう。


18日。
ここでばかりの会話がいつも待っていてくれているようなROBA ROBA cafeにもフライヤーお願いしてから、青山ブックセンター本店。
岸本佐知子クラフト・エヴィング商會“話のつづき”トークショー
個人博物館のようなエッセイ集“ねにもつタイプ”に撃たれて、この先はと辿っての会場。
場所が場所だけに、本の話題へと軌道修正されるけれども、やはり逸脱こそが楽しい。
食にコミケ灯台…仮想処刑には礼を以って備えないとね。
不躾にコンタクト取ったことがある身だけにヒヤヒヤだけれども。
終ってのサイン会に展示フライヤー携えて臨めば、以前にこのHPを覘いたことがあるとの言葉に昏倒。
…参りました。


rotae”並ぶNADiff modern、新宿タワレコに、フライヤーの併置頼んで帰る。


23日、搬入。
約束の時間に誰も現れず、日を間違えたかと公衆電話に向かう通りで、助っ人頼んだ友人次々発見。
追ってオーナーも到着し、ほっと開いた会場で作業開始。
原美のSさんも差し入れ手に覘いてくれ、また、この日がオープニングの“新國誠一&ASA その軌跡とオマージュ”展から流れてくる人もあって、会期前日にしてなんだか賑やか。
その波も搬入完了時には引いて、最後まで残ってくれたkumarineさんと閉廊間際のGallery Oculusへ。
作品載る紙の上の方が空いているほどにぎゅう詰めの展示でも、新國誠一の詩作は周囲を弾いている。
後に奈落が控えていたのか、現在に繋がることなく峻立しているようにも。
この感覚、新國誠一に限ったことではないのだろうけれど。


24日、初日。
のんびり出向いたら、すでにROBA ROBAさんが見に来てくれている。
展示スペースに照明灯るところから目にしてくれたそう。
偶然からだけれど、その演出は良いかも。
作品前で品川駅の特筆すべきを話す。
品川に初めて降りる人も多かったのか、これは会期中繰り返される話題に。
昨日の反動からか、この後が、夕方までがらんと空く。
現れた知人に、探し続けていたVox Populi !のカセットテープを土産と貰うのはもちろん嬉しいけれど、ここはただ足を運んでくれたことに感謝。


25日。
羽田野麻吏さん、トミ象さんと、東京デザインセンター内のイタリア料理店で昼食しながら来年の展示の打ち合わせ。
そのまま揃って啓祐堂まで歩く…現在の展示に向かって。
五反田からもさほど距離はない。
2人が会場内の空気を上手く攪拌していってくれたからか、この日は様々な顔が揃う。
知人だけでも、この場所との縁を取り持ってくれた人に、何時以来の対面とも知れぬ人やら、WEB上で面識ある人…。
とどめは、詩人の藤富保男の登場に眩む。


26日、神保町。
1号室|2号室金田貴和子“桃窓”展。
ここで暮らしているのかと錯覚するほど、心地好く力の抜けた空間。
お茶頂いて金田さんと話していると、部屋にお招き頂いたようで。
ラジカセから訥々とシンセの音が棚引いている。
壁に巡らした写真は、写り込んでいる/いないに拘らず、すみっこへの視点、感覚。
すみっこの安心感…なるほど、和んでの長居。
丁度居合わせた、酒井崇さんとの話、作品も同軌していくよう。


さてと自分の展示に返れば、この日は新國誠一関連イベントから出展者が揃って流れてくれ、帰りの一杯の末席に加えてもらう。
金澤一志さん、中村恵一さん、小野原教子さん、菊地肇さん、四釜裕子さん…。
皆真剣で、眼には好奇心をたぎらせ、格好良い。
気持ちの良い宴。
心密かに、これを自分の展示への祝杯とさせてもらう。


31日。
名古屋の自主アニメ上映会アニメーションテープスの主宰が足を運んでくれる。
ぜひにも、東京⇔名古屋間での音楽/映像イベントをしようと約束。
準備想うだけでもほくそえむ企画。
それにしても、在廊に応えて客足が遠退いているみたいだ。


9月2日、在廊。
友達伴って来訪してくれた古くからの友人と、賑やかに音楽談議。
methodさんと、所有に際して、壊れ/不可視となるものの話。
写真家のかやのしほさん、活花作家の志村みづえさんと、自己の領域を持つことで見えてくるものの話。
閉廊後、白金台まで歩いて、11月の展示の打ち合わせにProspect Hair Design
面白いスペースではあるし、それに応えるアイデアも用意してはいるのだけれど、説明聞いていると何かが引っ掛かる。


4日、最終日。
やはり、WEB辿っての来訪があるのは嬉しい。
友達から借りた本の頁に挟まれていた、フライヤー頼りに訪れた人があったのは、この日だったか。
来年展示を予定しているclementsalonの人の言葉に呑まれる。
目には見えないものを得るために、リスクを背負う…なんて、そう言えることではない。
この日は美容師尽いていたのか、Prospect Hair Designの人も足を運んでくれる。
先に覚えた引っ掛かりをぶつけてはみるけれど、要はこちらの解釈次第か。
仕舞いに来てくれたのは、絵描きのmolDazzleさん。
笑顔貰って、これにて了。


さても、展示ばかりでなく、付随作業もアイデアで以って当たれぬとは、至らぬことよ。