顛末観光

linedrawing2007-08-02

既に出ている結果へ向かって、経過を辿り直すのは儚い。
が、それも自分の日記不精ゆえのこと。


7月12日。
メールでは既にイベント告知発信しているが、フライヤーの刷り上りはこの日。
ちょうど作品制作に素材仕入れの必要もあって、早速にも取りに出掛けることに。
支持体とする古い地図を求めて青山、古書日月堂
シュルレアリスム関連の書籍、特装本などにも目を取られるが、ここは紙ものの扱いが豊富。
観光ガイドやホテルのパンフレットに紛れて、あるある。
地図は古くから多色刷りと聞かされるが、それでもまだ筆を加えられそうなものを選び出す。
物色する後で店の取材が行われていたようだけれども、制限されることもなくゆるゆる過ぎる時間。


同じ建物とあって、顔を出さずにはいられない東青山
この日の議題は…イデオロギーが零れたあとを満たしているものは何か。
いや、そんなにしかつめらしい話をしているわけではなく。
ここでゆっくりと交わす言葉で、ようやっとに吐く息。


のんびりが過ぎたかと急ぎ恵比寿gift_labに向かうが、未だ早い、人もフライヤーも着いていない。
遣り過ごす時間、すぐ隣にあっても足を向けていなかった、下北から移転して以来初めてのONSAへ。
レジに久々に会う顔を見付け、互いの現状報告に‘ぼちぼち’と交わす。
あっという間に潰れる、レコード屋での時間。
戻ると、ガイドよろしく、火薬を背にしたロバが迎えてくれる。
自分で選んだ画像なれど、gift_labの意匠もあって、あちこちにイメージを運んでくれそう。
まずはと、新宿のタワーレコードに託して帰る。


14日。
招待受けた佐藤実さんのアルバム発売記念イベントを、台風接近する中、あちこち経由してフライヤー撒きつつ目指す。


経堂のROBA ROBA cafeで、目当てのオリジナルカラーのマスキングテープを手にしながら、手間に比例して愛着の湧くものの話。
それがいつの間にか、不味いけれど癖になる食べ物の話題になっている。
さてそろそろと立ち上がるタイミングで入ってきたのが、おそらくこの日の展示作家。
岡本綺堂の“半七捕物帳”を携えているのが目に留まり、共感を表したくなる。
さても、夏だものね。


下北は他を回ってから、F'lmore Record
表の通りでアラーキーが、取り巻き引き連れ立ち回っている。
あれも台風で吹き込まれて来たのか。
持ち込んだチラシ文面をトレースするかのように、音盤挙げながらの捩れたトラッド談議。
この盤に反応する者の耳に告知を伝えられたらと思うこと、しばしば。
それは、先に寄ったNOAHLEWIS' RECORDでも抱いた感慨。
…それにしても次から次へと、散財しかねない音を薦めてくれる。


渋谷に出て、そこから代官山に向かって歩く。
gallery it'sに顔を出せば、開催中の展示内容もあってか、女子ばかりの中にポツリ浮く。
侵犯恐れて…ということもないのだけれど、チラシ置いてそそくさと。


この悪天候AQUVIIはガラリ。
台風直撃と予報されている翌日は、臨時休業するかもとまで。
他に客のないことを良いことに、ゆるりと話せば、なんと共通の知人の多いこと。
とある場所の過去/現在で居合わせた者同士。


風雨に祝われる、drop aroundの2周年。
けれど、避難所のように嵐に灯る居住まいは、似つかわしいかも。
誰彼の到着も待っていてくれているように見えて。
その雰囲気に駆られてか、以前から持ちかけようとあぐねていた、あるプロジェクトへの協力要請を唐突に口にしてみると、嬉しくも願った以上の反応。
お陰でようやっとに動き出す感を得ることが出来ました…されば実現に向けての拍車を駆けていかなくてはね。
おまけに、紙好きが見て取れる包装の記念品まで貰ってしまって。
さて、中身はなんだろう。


Poo-Bah Recordのレーベル・カタログに、LAFMS音源と共に並んで気に掛かっていたヒップホップ・タイトル。
先日目にしていたことを思い出したかのように、再び訪れるONSA。
キラキラと音が瞬く、TAKEの10inchを購入。


三軒茶屋で行われているはなうたサーカスのライブを見てから戻ってくるつもりだった予定を、天気に阻まれ端折って。
それでも、とうに開演時間を過ぎて入場の“instrumentalize at gift_lab”。
‘管’を共通項としての出演者…電子管楽器の沖啓介、喉の吉田アミ、そしてガラス管の佐藤実。
ガラス管ばかりでなく紙管までが並ぶ佐藤さんのセットから想えば、コラボレーションも管を積み重ねていく様…空間に通り道を空けるのか。
撹乱する大気に呼応するかのようにキリキリと鳴っている。
ともなれば嵐の目として集うのか、ここばかりの人入り。
翌週同じ場所で催す身では、動員が気が気ではない。


18日。
六本木AXISでのミーティングに大遅刻。
どうにもネジが散っている。
流通の一切を取り仕切ってくれている人が、万事話を纏めてくれていて助かった。
1人での約束だったらと思うと、ぞっとする。
あれこれの重みに頭が上がりません。


宿題課題を分担して解散。
隣駅のEMON PHOTO GALLERYへ。
横浪修“innocent”展。
装苑誌で目が留まる写真に、よくよく付された名前。
ファッション写真であれば、制約の中、スタイリスト、ヘアメイク、モデル居並ぶチームワークともなろうに、どうしていずれの作品からも共通した印象が放たれるのか。
被写体への注視促すでもなく、画面のどこかしこへもとぼけた視点が透徹している。
なにかが解れていく雰囲気…笑みだろうか。
ただ惜しむらくは、額の外…展示空間までは従え切れていないこと。


フライヤー渡そうと東青山に寄れば、先の大風に飛ばされたか、巣から落ちたオナガの雛たちに大騒ぎ。
僕も、御門違いの威嚇を親鳥から受けながら、目を離すと車道に出る雛を抱えて右往左往。
隣の歯医者の先生が与ってくれたことで、なんとかお役御免。
ようやっとに東青山は業務再開、僕は次の目的地へ。
ではまた…と交わしつつも、未だ気持ちは雛に引っ張られている。


道脇に見えた看板に誘い込まれる、display BY ARTS&SCIENCE“NADIA with WHITE”展。
沢渡朔の写真作品を中心に、衣装とも錯覚する白い服が吊るされている。
モノクロの緻密に写し出された物語世界に懐古の深い闇を感じれば、やはり70年代制作のものだそう。
いささか息苦しくも感じる程だけれど、空間に配置されたもの皆が作品に応えている。


活版印刷への興味から、誘われるようにして行き着くPAPIER LABO.
聞かせてもらった話からの収穫多々。
図像も版に起こせるとは。
それがデータ入稿という不思議。
デジタル経由のアナログ。
可笑しくさせる手間も、質感への集中からと思うとしっくりくる。
なにか嬉しい話だな。


千駄ヶ谷辺りまで来ているからと、そのまま新宿まで歩く。


21日。
Linus' Blanket Society #2”当日。
前回のトーク停滞の反省から、顔合わせ・打ち合わせ兼ねて早い時間から話し始める。
僕と秋山さんとの音楽談議に暴走のきらいもあったけれど、和やかに準備が進む。
本番披露に取って置けないことを惜しむ瞬間もちらほら。
流れ断ち切らず、曲掛けながら挨拶に代えての企画概要でスタート。
飛んでしまって考えてきたことの半分も喋れなかったが、要点はなんとか押さえたようにも。
済ませてからゆっくりとオハラさんの演奏を聴きたいと、秋山徹次さんの希望で先攻。
別の楽曲に付した英詩の翻訳を携えて、即興で伴奏する趣向。
うねうねと連なる吟唱が些か冗長に響きもしたが、唄を意識してか、アコギの爪弾きの艶やかなこと。
歌詞の遠景に描かれる風景が染みる。
休憩挟んでオハラマヤさんの登場。
風邪を引いてとの咳も挨拶も、始まった演奏に呑まれる。
ギターが先導する空間を唄が染み渡っていく。
喉に昏く光る声が住み着いているかのよう。
演奏後のトークは進行を鈴木さんに任せて。
同じ街での海外公演もあったりと、交互に話を聞く中、最後にセッションをと振ってみればなんと快諾。
始めから目論んではいたものの、鳴った瞬間に予期を割る。
2本のラインの凄まじい響き。
あまりのことに、口元から笑みが取れなくて。
ただ、ここまでの素晴らしい瞬間に対峙する動員を用意出来なかったのは、こちらの不始末。
恥じ入る他ない。