ウラジミール・ナボコフ“青白い炎”

linedrawing2006-08-23

ここのところ本を読む時間がなく…と言うより、読み始めるとすぐに寝てしまい…ようやっと読了。
“青白い炎”と題する長編詩とその注釈という珍奇な構成に、栞2枚用意して行きつ戻りつ。
そればかりか、僅かな時間にも読み進めればと、常に持ち歩いていたせいで本はボロボロ。
旅でも経てきたかのように。


本書が小説たる本体を成す注釈部分、そこで語られる王国の物語。
それは詩片の誤読によって書き進められるのだけれど、そもそも何に拠っているのか。
筋から言えば注釈者の経験もしくは妄想だが、曲解とはいえ詩/詩人が材料を与えていないわけでもない。
実のところ僕には、第3の登場人物からの伝聞とも取れる。
眩惑する由来。
当てられたか、語り手が何人登場しようと結局は1冊の本は作家の一人語り…と、どこか勝手に了解していることにまでに思い至ったり。
まかり間違えばそれは、全ての書物は世界唯一の作家の手によるものとまで思いかねないほどだ。


(富士川義之 訳 ちくま文庫)