花像

linedrawing2006-06-20

新聞の句評欄、加藤郁乎の句集(“實”文学の森)紹介に採られた内一句。


このはなのさくやはうつゝ初桜


初桜とあるのだから、そうであるはずがないのに、幾重に浮かぶ読みに八重を想ってしまう。
この句の前書とされた歌にも惹かれる。


あさゆふに花まつ比はおもひねの夢のうちにぞさきはじめける 崇徳院


待ちわびたのが開花のイメージであるのなら、現であろうとも、夢であろうとも。
夢であるなら、触れることも嗅ぐことも叶わぬ、いっとう高い枝についた花。
そこを始めに、次第に拡がっていくんだ。
目蓋を開いても閉じても、視界を埋め尽くすように。