高野文子 - ドミトリーともきんす(中央公論新社)

linedrawing2014-12-04

高校の頃に初めて手に取った著作から今読み終えた単行本まで、作品毎に驚かされ続けている漫画家が他にいるかな。
ちょっと思い浮かばない。
理論に止まらず科学の外にまでエコー響かせている科学者…朝永振一郎牧野富太郎中谷宇吉郎湯川秀樹の著作をテーマにしていることからして興味惹かれるが、
単なる読書案内とは成らず概要には収まらない。
彼らの視線と気付きを辿り、世界の触れ方を探っている。
繰り返し注意喚起するのは、科学、数字がある種の符号、抽象であるということ。
記号で構成された世界の梯子を昇るばかりでは意味を成さない。
学問は再びに自然に手を伸ばし触れるためのステップボード。
その意味では、漫画、フィクションも同じ効力足り得るはずだ。
それにしても、この絵に連動するコマ構成、視線の誘導はなんだろう。
最終話で内容と表現と世界がフラクタルな反復の中に入れ子状に収まるに至っては、魔法とすら感じてしまう。